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 1930年代から1960年代まで、子供向け・大人向けのを問わず、娯楽作品としてのアニメーションは、「漫画映画」というジャンルで分類され、「アニメーション」という用語は、1コマ1コマ毎撮影して制作された作品もしくはその映像制作手法として使用されるのが一般的でした。
 この時代、日本ではアニメーション史に残るような伝説的なパペット(人形)・アニメでさえも「人形劇映画」と呼ばれるくらいでした。 欧米では一般大衆向けの作品、子供向けの作品を問わず、基本的にストーリー要素のある印刷漫画や手書きによる動画作品を「カートゥーン」と総称していました。 こちらの方が「漫画映画」という意味合いに近いかもしれません。

 ディズニーやフライシャー兄弟が劇場用長編作品の制作を開始する1930年代後半までは、漫画映画作品の多くは7〜8分程度の短編が主流で、その後テレビが普及する1950年代後半まで、映画館では添え物作品として映画本編が始まる前に上映されていました。 そしてこの時代に量産されたこれらの膨大な作品群は、国産TVアニメの放送がなかった1950年代後半〜’60年代初頭、子供向け番組の穴埋めプログラムとして再利用され、娯楽に飢えた当時の子供達を多いに喜ばせました。 もちろんモノクロTVしかなかった時代なので全てモノクロ画像での記憶ですが、コミニュティの上映会等でカラー・フィルム版を見たときは逆に違和感を覚えた記憶があります。

 紹介する作品の内、幾つかのタイトルに関しては、既に多くの方が素晴らしい批評や研究業績を残されていますが、ここではあくまで’60年代前半に見た印象を元に、後年資料等で補足できた情報を加えて構成しています。 長編や大御所のDisney Studio作品をのぞいて、著作権継承の切れたパブリック・ドメイン扱いの為、米の非営利の電子図書館であるInternet Archive.orgで入手することも可能です。 (詳しくは同サイトの案内を参照)


 「バッタ君町へ行く」 "HOPPITY GOES TO TOWN"(1941)

Fleischer Studios制作/監督:デイブ・フライシャー/アニメーション:ウィラード・ボウスキー、ジェームズ・カルハーン、H.C.エリソン、トーマス・ジョンソン、グラハム・プレイス、スタン・クァケンブッシュ、デイブ・テンドラー、マイロン・ウォルドマン/テクニカラー/78分/パラマウント配給(公開時)

 原題タイトル名は2度目の再公開時のタイトル。 1960年代前半、フジテレビ系の「テレビ名画座」という毎日同じ作品を1週間続けて放映する番組があり、当時飽きもせず毎日この「バッタ君町へ行く」を見続けた記憶があります。 家庭用ビデオ機器がなかった時代に生活費を削ってフィルム全巻を購入した思い入れの作品です。 テーマ曲というべきホ-ギー・カーマイケル作曲、フランク・レッサー作詞の"We're the Couple in the Castle"は名曲です。(サムネイルをクリックすると詳細へ移動します)


 「魅惑の街角(正式邦題名は不明)」 "The Enchanted Square"(1947)

Famous Studios制作/監督:シーモア・ニーテル/ストーリーボード&美術:シェーン・ミラー/アニメーション:オレステス・カルピーニ、アル・オウガスタ/テクニカラー/10分/パラマウント配給(公開時)

 ラガディ・アン(おんぼろ人形のアン)が登場する作品としては3作目となる。 目の不自由な少女とラガディ・アンがイマジネーションの力を借りて友情を育む感動的な佳作。
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 「ハワイの小鳥」 "HAWAIIAN BIRDS"(1936)

Fleischer Studios制作/監督:デイブ・フライシャー/アニメーション:マイロン・ウォルドマン、サム・スティムソン/テクニカラー/9分/パラマウント配給(公開時)

 1934年から開始されたカラー・クラシックス・シリーズの13作目。 ハワイに愛の巣を作りにやって来た小鳥のカップル。 しかし一方の花嫁は都会から遊びに来たバンドマンの鳥達にスカウトされ、恋人を残して去ってしまう…。 フライシャーの都会的でシニカルな視点が垣間見える佳品。 (サムネイルをクリックすると詳細へ移動します)


 「グランピーのサンタクロース」 "CHRISTMAS COMES BUT ONCE A YEAR"(1936)

Fleischer Studios制作/監督:デイブ・フライシャー/アニメーション:シーモア・ネイテル、ウィリアム・ヘニング/テクニカラー/7分/パラマウント配給(公開時)

 カラー・クラシックス・シリーズの15作目。 ベティ・ブープ・シリーズからスピンオフしたグランピー(陽気で珍妙奇天烈な発明アイデアで人助けをするお爺さん)が唯一単独で登場する心温まるクリスマス・ストーリー。 (サムネイルをクリックすると詳細へ移動します)


 「夜勤のシンデレラ」 "SWING SHIFT CINDERELLA"(1945)

MGM制作/監督:テックス・アヴェリー(又はエイヴリー)/アニメーション:プレストン・ブレア、レイ・エイブラムス、エド・ラブ/テクニカラー/7分/MGM配給(公開時) * 邦題名はTV放映時のもの(公開時邦題名「狼とシンデレラ」)

 ワーナーに在籍していた当時から、チャック・ジョーンズらとともに、ディズニー流ストーリー・テリング手法の束縛を解き、自由奔放なストーリーとキャラクタを生み出したテックス・アヴェリーのMGM時代の監督作品。 アヴェリー6作品に登場するセクシーなショー・ガール「レッド(作品により名前は変わる)」出演の第3作目。 プレストン・ブレアのキャラクター・デザインとアニメートが光る名作。
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 「ビン坊の秘密結社」 "Bimbo's Initiation"(1931)

Fleischer Studios制作/監督:デイブ・フライシャー/アニメーション:マイロン・ウォルドマン、グリム・ナトウィック/白黒/6分/パラマウント配給(公開時)

 トーカートゥーンズ・シリーズの24作目。 フライシャーが生み出したオリジナル・キャラクター「ビンボ」が主役のシュールでダークな味わいのある傑作短編です。(邦題名は「ビンボー〜」になったり、「ビン坊の結社加盟」の時もありました。)

 また、最終デザインが決定する前のベティ・ブープが登場する作品でもありました。 正式にクレジットされていませんが、ベティのオリジナル・キャラクターを創造したアニメーターのグリム・ナトウィック及び、フライシャー・スタジオのベテランであるマイロン・ウォルドマンの担当作品です。 (サムネイルをクリックすると詳細へ移動します)


 「スリーピーホローの伝説」 "The LEGEND of SLEEPY HOLLOW"(1949)

W. Disney制作/監督:ジャック・キニー、クライド・ジェロニミ/アニメーション:フランク・トーマス、オリー・ジョンストン、ジョン・ラウンズベリー、ウォルフガング・ライザーマン、他/色彩設計:メアリー・ブレア/テクニカラー/33分/RKO配給(公開時)

 ワシントン・アービング原作「スケッチブック」の1篇「首なし騎士」の伝説("The Headless Horseman")を描いた作品。 ラスト5分、ダイナミックなアクション・シーンを得意とするアニメーター、ウルフガング・ライザーマンによる主人公イカボット・クレーンと首なし騎士の追走シーンは圧巻。 国内外を問のわず多くのアニメーターに影響を与えた作品です。
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 「動物たちの国造り」 "Peace on Earth"(1939)

MGM制作/制作・監督:ヒュー・ハーマン/アニメーション:レイ・エイブラムス、カール・ウルバノ、ジョージ・ゴードン、ピート・バーネス、他/テクニカラー/9分/MGM配給、Loew's Incorporated配給(公開時)

 1939年アカデミー短編漫画映画賞ノミネート作品。 クリスマスを祝う動物たちの国で、リスのお祖父さんは孫たちに、かつてこの世界を支配していた人間という動物が愚かな戦争を起こして終末に導いたお話を聞かせる。 お祖父さんリスのお話の中で描かれる第1次世界大戦とおぼしきリアルなライブ・アクション・アニメーションが、第2次世界大戦に突入した当時の世相を強く反映、平和への願いが込められた佳作。 (サムネイルをクリックすると詳細へ移動します)


 「眠れる森の美女」 "Sleeping Beauty"(1959)

W. Disney制作/監督:クライド・ジェロニミ/アニメーション:マーク・デイビス、フランク・トーマス、オリー・ジョンストン、ジョン・ラウンズベリー、ミルト・カール他/美術監督:アイヴェン・アール/テクニカラー/キャラクター・スタイリング:トム・オレブ/テクニラマ70mm/76分/Buena Vista配給(公開時)

 説明するまでもなくディズニー長編漫画映画の16番目の作品。 スタイリング・アーチストのアイヴェン・アール(アイヴィンドと表記される場合もあります)に美術を含めたデザイン設定の全権を与えた作品。 中世タペストリを思わせる直線的、図案的な森のデザインに完成された様式美を感じます。

 アニメーターの中村 孝さんはこの作品を幼少時に見てアニメーターを志したそうです。 私にとってストーリーよりも究極のスタイリング・アニメーションの世界観という印象を受けた一作です。
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